「あのさあ、聞いてもいい?」
年明け初めのセリフは、あけましておめでとうでもなければ、謹賀新年でもなければ、今年もよろしくでもなかった。
「な、何?」
まあ、大体何を聞かれるのかはわかっていたりするわけだけど、そこはあえて触れない。
そろそろと振り向いた。もちろん、私はパジャマ姿のまま。
「これ、一人でやったんだよな?」
彼が指差すこれ、とは何のことなのか。
順を追って説明しよう。
昨日、つまり大晦日、彼は残念ながら仕事で家を空けていた。だから、私は一人で年越しそばを食べて紅白とK−1を見ていた。
で、その途中で何となーくアルコールが恋しくなってしまったわけ。
そこで、私は冷蔵庫を開けたのよ。確か紅白では・・・ああ、そう、あれはニュースのときだったわ。
とにかく、立ち上がって冷蔵庫を開けて、アルコール飲料を探したのね。
そうしたら、いつものビールの他にもらいもののワインもあって。
こう見えてもワイン好きな私は、それだけでときめいた。すかさずワイングラスを食器棚から出してきて、よーく冷えたワインを少し・・・・・・。
きっと、一人ぼっちだから寂しかったのね。いつもならグラス二杯くらいで止めておくところを、ぐいぐい飲んじゃったわけ。
そんでもって、紅白もK−1も盛り上がるじゃない?
「で、このありさまってことか」
そう、そうなのよ。盛り上がった気分で気の向くままにワインを飲んで、踊ったりしていたら・・・その・・・なんていうか・・・大掃除の意味がなくなったっていうか・・・。
「・・・ご、ごめん・・・」
朝起きてびっくりよ。だって、ほんとにすごい状態なんだもの。
でも、パジャマをちゃんと着ているあたり、私ってばなかなかやると思う。
「俺、徹夜の仕事帰りなんですけど」
「すいません、ほんとに」
今度は心の底から反省。結局ワインは一人で全部飲んじゃったし、ああ、何やってんだろ、私。
疲れてる彼の手を煩わせるなんて、ダメだよね。
だけど、際限なく沈んでいく気持ちに飲み込まれそうになったとき、ぽんと頭に彼の手が乗った。
「ま、お前も寂しかったってことで。俺にも責任は・・・ちょーっとだけあるよな、ちょーっとだけ」
どこが好きで一緒に住んでるの、って聞かれたら、こういうところだーって即答できる。
「うん、ちょーっとどころか、いーっぱいね」
「・・・調子に乗るな」
「・・・はい」
少しだけ笑いあったあと、二人で腕まくりをする。
新年早々大掃除だなんて、ほんと、おかしいんだけど・・・でも、彼と二人ならそれでもいいかな、なんて。
徹夜あけの彼の隈をそっと指でなぞって、私からのお詫びの印。それから、今年もよろしくの気持ちをたっぷりの愛と共に。
「でも、酒はしばらく飲むなよ」
「・・・うん」
―――― May the new year bring you happiness!
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